今年はやたらアニサキスの話題をニュースで目にします。その影響もあってか、鮮魚の売上も不調のようですね。
「アニサキスは寄生虫、気持ち悪いし、胃から血が出る。何それ恐い」って感じで、購入を控えるんでしょうけど、魚を食べてアニサキス症を発症するケースってそんなに無いと思うんですよ。
アニサキスとは
アニサキスは寄生虫です。長さは2~3cmくらいで、ニョロニョロしています。
でも実はアニサキスには遺伝子レベルでの種差があって、
- アニサキス・シンプレックス
- アニサキス・ピグレフィー
という型の違いがあります。※1
ちなみに国内のアニサキス症の症例では、アニサキス・シンプレックスが摘出されることが多いです。
これには理由があって、本来アニサキスというのは、魚の内臓に留まっていることが多いのですが、アニサキス・シンプレックスは内臓から筋肉への移行率が高いという特徴があるためです。
ヒトは魚の筋肉部分を喫食するため、「筋肉への移行率が高い=感染しやすい」といえます。
主な寄生部位は胃
ヒトが生きたアニサキスを食べてしまった場合、胃や腸に寄生することになりますが、大部分は胃に寄生します。
劇症型の場合は、胃酸に刺激されたアニサキスが胃壁を食い破って逃げようとするので、激しい痛みや出血を伴うことがあります。
主な宿主はサバ、アジ、イカ
アニサキスの最終宿主はクジラやイルカなどの海洋ほ乳類です。でもニュースで話題になるのは、サバとかイカですよね。
アニサキス症発症の流れとしては、
- クジラ等の体内で成虫になったアニサキスが卵を産む
- 卵が便と一緒に排泄される
- オキアミ(小さいエビ)が卵を食べ、オキアミのなかで幼虫まで育つ
- そのオキアミをサバが食べる
- そのサバをヒトが食べる
- 感染成立!
って感じですね。
まぁヒトは最終宿主ではないので、アニサキスがヒトの体内で成虫まで育つことはありません。ただし、成虫にはなれませんが、幼虫の状態は維持できるので、その幼虫が消化管で悪さをするわけですな。
ほんで、サバのアニサキス保有率なんですけど、なんと約70%となっております。高い!
日本海側のサバと太平洋側のサバ
サバから検出されることが多いアニサキスですが、実は日本海産のサバと太平洋産のサバで、アニサキスの型が異なります。
先ほど紹介した
- アニサキス・シンプレックス(筋肉への移行率高=感染しやすい)
- アニサキス・ピグレフィー(筋肉への移行率低=感染しにくい)
なんですが、日本海産のサバはピグレフィー、太平洋産のサバはシンプレックスの保有率が高いです。
私たちはサバの筋肉部分を食べることになるため、(生食する場合)シンプレックスを保有する太平洋産のサバの方がアニサキス症発症のリスクは高いといえます。
北九州の辺りではゴマサバなど、サバを生で食べる料理が多いのですが、日本海産のものが多いので、アニサキス発症のリスクは低いといえます。
寄生虫は生物、つまり温度変化に弱い
そんなアニサキスですが、所詮は寄生虫、つまり生き物です。
生き物である以上、高温や低温などの温度変化には滅法弱いです。スーパーの鮮魚コーナーで買ったサバを生で食べるケースってあんまり無いと思うんですよね。焼くなり煮るなりして、火を通して食べるのがほとんどじゃないでしょうか。
だから、サバを生で食べるケースを除いては、アニサキスを極端に恐れる必要は無いと思うんですよね。
まとめ
ということで、何かと話題のアニサキスですが、「恐いから食べない」はあんまり賢い対策とはいえません。どういうケースで人への感染が起こるのかを知っておけば、そんなに恐がる必要も無いと思います。
サバの味噌煮、塩焼き美味しいよね。